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1)精神疾患は治せます。
2002年のWHOの調査では、自殺者の約30%がうつ病、18%がアルコール依存症など薬物乱用、14%が統合失調症をそれぞれ発症していたそうです。うつ病は15~7人に1人、統合失調症は約100人に1人というように多くの方がかかるありふれた病気であり、決して珍しい病気ではありません。うつ病、アルコール依存症、統合失調症は、今では効果が証明された治療法が開発されており、適切な治療を実施できれば、例えばうつ病で85%が反応する(WHO)と言われています。自殺しようと思った人でも、治療により新しい人生を歩んだ方はたくさんいます。精神科、心療内科で、まず診てもらいましょう。
2)相談できます。
身近な人に相談はしにくくても、赤の他人に電話でだったら、話せそうではないですか?現在、そのための相談窓口がたくさんあります。全てを詳細に紹介するのは不可能なので、一部を紹介します。
・全国いのちの電話
地域ごとに電話番号が分かれています。なお、毎月10日(午前8時~翌日8時までの24時間)はフリーダイヤル(0120-738-556)で電話できます。
・チャイルドライン
18歳までの方。
・法テラス(日本司法支援センター)
多重債務など経済面で困っている方に特に向いています。
・自殺予防総合対策センター
相談窓口が地域ごとにまとまって書かれています。その分、ちょっと見にくいところもありますが・・・。
3)あなたは愛されています。
硫化水素による自殺では、母親をはじめとする身近な人の巻き添え(死亡・重体等)が多発しています。張り紙があろうが、入ると危険なことを報道などで知っていようが、少しでも早く助けるために無防備で中に入るのが親というものです。日ごろの愛情表現は下手かもしれませんが、多くの親がそうであることが最近の報道で明らかになったのではないでしょうか。身近な人に話してみませんか?
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以上、最近読んでいる「自殺予防」(高橋祥友著・岩波新書)を元に、自殺の話題を書く時に頭に置いておくと良いのかなというイメージで、呼びかけ的なものを作成してみました。専門家ではないので完璧なものではないと思いますが、コピペなり改変なりして使って頂いても結構です。なお、タイトルは楠氏の雑種路線でいこうに呼応して付けました。硫化水素・作り方とかやると更に良いのかな?ちなみにこんな記事書いたら、間違いなくフィルタリングで弾かれるだろうなぁ。
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で、ここからが今日の本題なんですが・・・。
というように、「ネットで書かれているのが悪い」と多数報道されたりしています。上の2つだけでなく、ワイドショーなどで似たようなことが言われています(というか下のものはワイドショーそのものだけど)。たしかに、ネット上にある硫化水素の作り方が書かれたものなど、消せるものは消したほうが良いと私は思っています。違法か有害かと考えると、はっきりいって違法な書き込みとは断言できない。有害であることは間違いないが、有害ならどこでも消せるというわけではない。でも、消せるなら消して、数を減らした方が良いとは思っています。とはいえ、100%消せるわけではなく、消しても更に奥へ、奥へといくだけでしょう。根本的な解決にはならない。できることといえば、数を減らすことと、こんなタイトルながら予防的なことも書いたりして割合を減らすことか。毎日新聞社説:硫化水素自殺 死を誘発するサイトの罪深さ
「インターネットの自殺サイトで「簡単で確実に死ねる」として生成法が紹介されているため、最近は若者を中心に流行のように広がっている。」「自殺へと駆り立てるインターネットの魔力の不気味な広がりに、慄然(りつぜん)とするばかりだ。」「生死のはざまで悩む人を自殺に駆り立てる誘因については早急に除去する取り組みが求められる。」
硫化水素自殺が続く 鳥越「ネット情報見た連鎖」
「明らかにインターネットで情報を見た連鎖反応、練炭自殺に変わる方法でまるで流行のようだ。社会が病んでいるとしか思えない」
一方で気になるのが、これまでのマスメディアでの報道の仕方。いくつかのパターンを書くと、硫化水素自殺が多発しているというもの、巻き添えが多発しているというもの、ネット上に方法の書き込みが多数あること(簡単にネットから方法が調べられること)、必要な商品が手軽に手に入れられること、硫化水素の毒性の強さ、という感じではないかと思います。言い方を変えると、簡単に方法が調べられ、簡単に材料が手に入り、簡単に苦しまずに死ぬことができ、みんなもやっている、といっているようなものです。実際は死ねずにひどい後遺症が残ったり、死んでも体が緑に変色したりなど簡単なものではないようですが、そのような言及はあまり見られないですし、問題解決の方法などを提示するような報道は今のところ見ていません。むしろ、報道が自殺の方法、方法の書いてある場所、必要な材料などを教えて、誘導している状態ではないでしょうか。
「自殺予防」(高橋祥友著・岩波新書)によると、WHOなどにより自殺報道に関する報道のガイドラインが発表されているそうですが、その骨子は、
というもののようです。なお、時事通信とNHKは「硫化水素自殺の報道、配慮を=予防学会が緊急アピール(時事通信)」というような記事を配信しています(が、他の新聞社等では見つかりません)。1)短期的に過剰な報道を控える。
2)自殺は複雑な原因からなる現象であるので、自殺の原因と結果を単純に説明するのを控える。
3)自殺報道は中立的に伝える。元来自殺の危険を抱えた人が自殺者に同一化する可能性があるので、自殺をことさら美しいものとして取り扱ったり、大げさな描写をしない。嘆き悲しんでいる他の人々、葬式、追悼集会、飾られた花などの写真や映像を添付しない。
4)自殺手段を詳細に報道しない。自殺の場所や手段を写真や映像で紹介したりしない。どのような場所でどのような方法で自殺したかといった情報はできるだけ簡潔にする。
5)(とくに青少年の自殺の場合には)実名報道を控える。
6)自殺の背後にはしばしば心の病が潜んでいるが、それに対して効果的な治療法があることを強調する。同じような問題を抱えながらも、適切な対応を取ることによって、自殺の危機を乗り越えた例を紹介する。
7)具体的な問題解決の方法を掲げておく。自殺の危険因子や直前のサインなどを解説し、どのような人に注意を払い、どのような対策を取るべきかを示す。専門の医療機関や電話相談などについてもかならず付記しておく。
8)日頃から地域の精神保健の専門家とマスメディアとの連携を緊密に取る。このようにすることで、群発自殺の危険が高まった時でも、適切な助言を時機を逸することなく得られるような体制を作っておく。
9)短期的・集中的な報道に終わらせず、根源的な問題に対する息の長い取り組みをする。
もちろん全てをガイドライン通りにすることは不可能でしょう。メディアの報道の自由もありますし、読者側、視聴者側の知る権利もあります。それを国家が強制的に行わせたら検閲ですし、中国や北朝鮮のようになってしまいます。ただし、「人命は地球より重いっていうんだから、ネット規制でも何でもすればいいのよー」というようなことを叫んでいたおばさんが出演するワイドショーなんかは、ガイドライン100%遵守にしてもいいかもしれませんが。
とはいえ、全てができなくても、一部はできるのではないでしょうか。どの一部かはニュースソースによるものもありますが、特に6)と7)なんかは多くのニュースに付け加えられそうです。毎回毎回というのが視聴率的に難しいのだったら、何回かに一回、あるいは何分以上自殺報道した際はする、など条件付きにしてもいいでしょう。今はほとんどゼロなのですから、そのような報道がされるだけでも大きな前進です。また、テレビだったら相談窓口の電話番号なんかは、番組の進行とは関係なく下の方にテロップで書いておくだけでも前進ではないかと思います。工夫して、少しでも近づけるようにしてほしいものです。
毎日新聞の社説では、「生死のはざまで悩む人を自殺に駆り立てる誘因については早急に除去する取り組みが求められる。」と結ばれています。その取り組みが求められているのは、自分自身、マスメディア自身でもあること。その自覚も求められているのではないでしょうか。